親権
離婚時の親権問題につきご説明いたします。
親権者の判断基準
協議離婚により当事者の話し合いで親権者を定めた場合にはその者が親権者となりますが、決まらない場合には裁判所に決定してもらうことができます。
離婚後、父母どちらが未成年の子供の親権者となるかについて、裁判所は、子供の利益や福祉を基準として決定します。
一般的には父母の監護能力、経済的な側面、居住・教育環境、子への愛情、従来の監護の状況、実家の資産や親族からの援助等を総合的に裁判所が判断して決定します。
離婚原因が妻の浮気の場合でも、子供が母親に十分な監護を受けている場合など、離婚の有責性は、あまり考慮されず、子供の利益・福祉のために、父母どちらが親権者となるべきかという点を裁判所は重要視するようです。
一般的な裁判実務として、
- 乳幼児の場合は母親が親権者とされることが多いです。
- また、現実に監護を行っている者が優先されやすいという点もあります。どうしても親権者となりたい場合には、子供を残したまま別居するということはなるべく避けるべきでしょう。
- また、10歳以上の子であれば、子供の意思も尊重される傾向にあります。15歳以上の子については、裁判所は親権者を指定するに当たり意見を聴取する必要があるとされています。
なお、親権はしばしば争われますが、
- 乳夫婦別居後も、これまでと監護の状況に変化がなく、監護者(実際に子供の面倒をみている母または父)の監護に特に問題がなく、監護していない方に今後の監護があまり期待できる事情がない場合には、これまで監護してきた方の親が親権者となることが一般的です。
裁判でどちらが親権者となるか判断するのが困難な事例としては、
- 夫婦が別居する前後で実際に監護している者が異なる場合
- 子供の兄弟それぞれにおいて監護者が分かれてしまっている場合
- 監護の状況や親子の関係自体に問題がある場合
- 父母両方ともに監護を十分に行うことができ、子供との関係も良好である場合
などがあります。
裁判手続において親権者を決める流れ
家庭裁判所は、夫婦間に未成年の子がいる場合で離婚を認める判決をする場合には、職権で親権者の指定をしなくてはならないとされています(人事訴訟法32条3項)。 従って、裁判で離婚が認められる場合には、父母どちらかが未成年の子の親権者となります。
一般的には、裁判の場合において、離婚の原因や慰謝料などの審理と一緒に、親権者についての審理もなされます。
離婚の裁判において、準備書面や陳述書として親権者の指定に関連する事実関係をお互いに主張しあい、また証拠を提出します。
陳述書などには、監護の現状・そのような監護に至った経緯・同居時の監護の状況・父母それぞれの経済状況・子供の状況・父母や監護を補助する親族などの意向・監護していない親の子供との面談の状況・将来の監護の見通しなどについてお互いに記載します。
これらの資料では裁判所が判断できない場合には、必要に応じ、子供に陳述書の提出を求めたり、裁判所の調査官による面談などが行われます。(なお15歳以上の未成年の子については、裁判所は意見を聴取する必要があることになっています。)
面談等の調査を行った調査官は、その結果を調査報告として作成して、裁判官に提出します。当事者はこれらの内容を閲覧・謄写することができます。
以上のような証拠や資料に基づいて裁判所が、離婚を認める場合には、親権者の指定を行います。